たまには歴史に触れねば、、、ということで名作「項羽と劉邦」(こううとりゅうほう)を読んでみました。
「項羽と劉邦」
文庫本で上・中・下とあり、非常に読み応えのある小説でした。
やっぱり有名な作品は、それなりの何かがあるんですね。
「項羽と劉邦」の舞台は紀元前200年ごろの中国で、秦の始皇帝が斃(たお)れて漢帝国が興るまでの機関です。
中心人物は、タイトルにある通り2つの国の王様です。
楚王 項羽
漢王 劉邦
2人の英雄とその武将たち、彼らを取り巻く人々の群像劇という感じです。
社会も価値観も今とは全然違う時代の人々が主人公ですが、
司馬さんの手腕のおかげか、どの人物にも感情移入して読むことができました。
ただ、やっぱり敗軍の将に感情移入してしまうのはどこの国も同じらしくて、
漢に破れて滅んだ楚の項羽については、壮絶なエピソードがたくさん残っていた様です。
「四面楚歌」
「四面楚歌」という四字熟語は、項羽が最後の戦いで漢軍に砦を囲まれた際、自分の国民である楚人までものが敵軍に混じり、一面にわたって母国・楚の歌を唄っている…という故事から生まれたらしいですね。
あたり一面敵、というだけでなく、
身内まで敵になってしまったとは。
項羽はこの後自分の命運を悟り、
残った配下と恋人(虞姫)と共に最後の宴を開きます。
そこで項羽が詠んだという、詩が残っています。
力拔山兮 氣蓋世 (力は山を抜き 気は世を蓋う)「騅(すい)」というは項羽の愛馬で、天下の名馬だったそうです。
時不利兮 騅不逝 (時利あらず 騅逝かず)
騅不逝兮 可奈何 (騅逝かざるを 奈何すべき)
虞兮虞兮 奈若何 (虞や虞や 汝を奈何せん)
また、「虞(ぐ)」とは虞姫(ぐき)、項羽の恋人のこと。虞
山を抜くほどの実力が自分にはあっても、
時利、時代が味方せず、騅に乗って戦場を駆けることはもうできない。
愛する虞のことも、どうしてやることもできない。
という何とも豪快で悲しい詩です。
項羽は何より虞姫が敵の手に落ちるのを恐れていました。
詩を聞いた虞姫は項羽の気持ちを理解し、自ら進み出て剣の舞を踊ります。
項羽はその剣を受け取り、自らの手で彼女を斬ってしまいました。。。
いわく、昔の人は現代人よりも感情が豊かで、激情に駆られやすいたちだったとか。
こういう話を聞くと、それも分かる気がします。
歴史上の出来事は、理に適わないことや無駄なこと、意味不明な行動なんかたくさんありますが、人間が感情の起伏で生きているとすれば、それも当たり前かもしれません。
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