真空と大気・・温まり方が違う!?【Q&A】後編 | 熱のことなら-【熱闘ブログ】

2014/04/11

真空と大気・・温まり方が違う!?【Q&A】後編

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Question: この真空雰囲気の中と、大気中と、
温まり方に違いはあるのでしょうか。
真空中は気体がないため、伝導は難しいことがわかります。
その他では、熱の伝わり方は違うのでしょうか?
KAWAI:輻射に関しては、太陽が地球に熱を伝えるように、
真空化であっても熱を伝えます。
伝導に関しては・・・実際に試験したデータをご覧ください!!

さて、前々回のこの問いかけ!今回は回答編ですよ。

結果発表!

試験環境はこちらで確認してくださいね。
大気中、真空中、まったく同じヒーターで試験を行っています。


ポイントは大きく分け、3つあります。



ポイント①温度ムラの具合が変わる

まずは、熱盤の温度のムラを測定してみました。

▲ヒーターの温度ムラ試験 測温点
一般的に、周囲からのもらい熱がある上、表面積が少ない中央部は温度が上がりやすいと言われています。

それに対し、端部は中央部に比べ、周囲からのもらい熱が少なく、対して表面積が大きいことから、温度が上がりにくいです。

このような、中央部と端部とのムラのことを温度ギャップと呼び、面で均一な熱がほしいようなプレス機などでは、たびたび問題となります。
⇒リンク:温度ムラって何?

では、大気中と、真空中とでどの程度差が出たか、見てみましょう。




①、②の各測温点の温度の差を、表にまとめました。
大気と真空とを比較し、赤字で記してあるのが、温度ギャップが小さかった方です。
これを見ますと、真空雰囲気下での加熱は、非常に温度ギャップが少なく、温度がなじみやすいことがわかります。

0.05℃というと、大気でいえば、ステンレスの熱盤単体だけでは、実現が難しい域の温度差で、より温度をなじませるために、周囲にも工夫が必要です。
これは、真空中は放熱が起こり得ず、ステンレスに熱がこもりやすい条件下にあったことが要因です。


しかしながら、昇温時は大気雰囲気に比べ、温度ムラが大きく発生しております。
これは、次のポイントで説明が可能です。


ポイント②ヒーターと熱盤で温度ギャップが大きくなる

次に、ヒーターと熱盤との温度ギャップを確認しましょう。


▲ヒーターとの温度ギャップ試験 測温点
ヒーターの碍子部の表面温度、プレート中央部の温度をそれぞれ測りました。
それでは、各温度ギャップを見てみましょう。

下記グラフの曲線は、それぞれ

 制御温度
 ①ヒーター碍子部
 ②プレート中央部
 外気温

を表します。

▲100℃の比較 真空はヒーターのオーバーシュート幅が比較的広い(およそ60℃)
▲200℃でも、真空雰囲気下でのヒーターオーバーシュート幅は約60℃。

▲300℃も真空化でオーバーシュート約60℃。プレートよりもヒーター温度が高い。
はい。如何でしょうか。
碍子の温度=ヒーターの表面温度ととらえるのは危険です、ヒーター表面温度はこれ以上になっていると考えてくださいね。


プレート中央部の温度が制御温度に近づいているときを見てみてください。
大気雰囲気では、碍子部の温度は、プレート中央部よりも低くなっていますが、真空中は、逆に高くなっていますね。
ポイントは、碍子への熱伝導よりも、プレートへの熱伝導が遅れているということです。

ヒーターとプレートとの間には、どんなに精度よく穴加工を施しても、熱伝導が悪い空気層(=クリアランス)が存在してしまいます。
真空中では、この空気層が悪さをしており、プレートへの熱伝導を阻害してしまっているのです。
真空中はヒーターに熱がこもりやすい。

この辺りは次のポイントにも共通しているところなのですが・・・



ポイント③昇温の速度が変わる

▲200℃時 大気、真空で昇温速度を比較したグラフ
上記グラフをご覧ください。
200℃で制御した時の昇温速度がわかりやすいよう、一つのグラフにをまとめてみました。

▲クリアランスに注意
真空中の方の、昇温の遅さが目立ちますね。
また、一度制御がかかり、ヒーターがOFFされてから、ONに復帰するまでのサイクルも、真空中の方が間隔が長いです。

そう、真空中は、熱しにくく、冷めにくい雰囲気だということです。
伝導の速さが変わるわけではなく、放熱がないため、プレートに熱がこもりやすいんですね。
周りに自然の断熱材をまとっているイメージとでもいいましょうか。

じゃあ、昇温の速度も速いんじゃないの?ということですが、これまた、先述のクリアランスが悪さをしており、ヒーターの熱がプレートに伝わりにくいために遅くなってしまっているのです。



真空≠大気!伝わりましたでしょうか?

・・・いかがでしょうか。今回は内容た~~っぷり!でお届けしました。

▲HLP カートリッジヒーター真空仕様

こちらが、真空雰囲気を乱すことなく使える真空用碍子を付けた、HLPカートリッジヒーターです。

今回の結果で、真空雰囲気は、大気雰囲気と同等に考えることが出来ないこと、十分に伝わったのではないでしょうか?

悩んだときが・・相談時!
周辺の構造から、河合電器製作所に、ぜひ一度ご相談ください。

300℃以下であれば、カートリッジヒーターだけではなく、真空用面状ヒーター、フィルムヒーターもご提案が可能です。

フィルムヒーター - 株式会社河合電器製作所

真空についてお悩みの方は、河合電器までお気軽にお問い合わせください!



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